おててにちゅうまにうけちゃだめだよ。色んな人の声でその忠告を聞いた。あいつは誰にだってそうなんだから。たぶんそうなんだろう。妙な匂いをからめた視線を送って来るのも、時折語尾が甘くなるのも。きっと特別な相手にだからじゃない。彼には呼吸のように自然なことなんだ。これはただのお遊びのひとつ。子供がおもちゃを気まぐれに転がすみたいに。膝にのせた彼が、長い前髪の隙間から私を見る。睫毛に縁どられた瞳には裏も底もみえない。なにも見抜けない私は節穴だから、聞いた言葉を繰り返すしかできない。まにうけちゃだめだよ。「本当にそう思うの?」何も見えない私に、何もかも見えているような彼が薄く笑ってみせる。わざとゆっくり手をとりあげた。「これでも?」text … from ...2014.11.15 14:10e kaita